新御番鍛冶の2振り目の奉納刀の報告

 『新御番鍛冶プロジェクト』におきまして、この度、2振り目が奉納されましたのでご報告いたします。

 「後鳥羽天皇遷幸八百年記念刀奉納」行事が令和6年11月23日に隠岐神社にて執り行われ今回、当協会理事長の大野 義光刀匠が鍛錬した太刀が奉納されました。

「太刀」
銘表:神前 後鳥羽天皇遷幸八百年記念刀奉納會
 裏:令和六年秋吉祥日東都往人義光謹作之
  長さ: 78.3 cm 反り:3.0 cm

 本作は鎌倉中期の備前国一文字の作風がよくあらわれた華麗な太刀。腰反りが深く、鎬造、庵棟である。刃文は華やかな重花丁子、地鉄は良く詰んだ板目である。刃中の働きは丁子足と葉が良く入り、刃は冴えている。

●大野 義光(本名:吉川 三男)
 日本刀文化振興協会の日本刀名匠(作刀) 、日本美術刀剣保存協会の無鑑査に認定されている。
 16世紀の武将上杉謙信が所持していた13世紀の太刀、国宝の山鳥毛(備前国一文字)の写物を生み出すことに成功した実績でも知られる。重花丁子刃文が作品の特徴である。この鎌倉期の丁子文様の再現が、「大野丁子」とも呼ばれる特徴的な丁子文様の開発につながった。平成時代を代表する刀匠として、令和6年(2024)に後鳥羽天皇遷幸八百年紀念の平成御番鍛冶の一人に選ばれた。

【新御番鍛冶プロジェクトの概要】
 「御番鍛冶」とは、鎌倉時代、刀にまつわる様々な伝承をもつ後鳥羽院に起源を持つ、後鳥羽院に任命され、刀を鍛えたとされる刀鍛冶の呼び名である。後鳥羽院がこの隠岐・海士の地で崩御されて七百年の後の昭和14年(1939)、隠岐神社が創建されるにあたり、全国から選ばれた刀鍛冶が新作刀を奉納した。当時の新聞や軸防社、ごの光果に浴した刀匠を「昭和の御番鍛冶」と称えた。
 そこから時代は進み令和3年(2021)、後鳥羽院の運命八百年を迎えた年、再び、平成時代の技を後世に伝えるべく、名工を選び新作刀を後鳥羽院の神前に奉納することとなった。これが「新御番鍛冶プロジェクト」である。

なお現在、プロジェクトを主導しているのは、元大英博物館のキュレーターで、日本刀研究家のポール・マーティン氏。